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焙煎履歴 2

前回の続き。

焙煎と火事は、割と付き物だが。

焙煎修行中に、諸先輩達から火事について聞いたことは、
「万が一焙煎中に豆がくすぶりだした場合、慌てて冷却台に排出すると
空気中の酸素を取り入れて炎が一気に天井迄立ち上がるからそんな時は、釜内で燃やしてしまえ」。

とだけ聞いていた。その時は、そんなへまはやらないだろうと高をくくっていたが、まさか自分が、そんな大失態をしでかすなんて夢にも思わなかった。

このときも、焙煎機の近くにいたんだが、別の作業に気を取られていて
気が付くとデジタル温度計(煎り豆側)は軽く300度を超えてダクトの継ぎ目からは、煙がもうもうとと立ち上がっていた。

慌ててバーナーの火を止めて、冷却台に落とそうと思ったが、先の話を
思いだした。
幸い外は大雨で煙突から火の粉が出ても大丈夫だったから
覚悟を決めてそのまま燃えつきるのを待った。

この間、焙煎機メーカーに電話したが、担当者に中々繋がらず、途中で電話を切った。
さらに何を血迷ったか、同業のライバルメーカーにもどうした物か電話した。

この時、排気モーターも止めて吸気を止めておけば良かったのだが、そこまで頭が回らなかった。
やがて、釜内で燃え尽きて軽くなった豆(炭)が排気ダクトそしてサイクロンにどんどん飛んでいってしまった。

サイクロンには緊急用にシャワーが出るようになっていたからここまで来た豆はすぐに鎮火した。
温度計が800度だったか900度だったかになった頃、排気ファンの羽が熱で溶けて空気が流れなくなってようやく鎮火した。
この時初めて、排気モーターを止めておけばこんな酷くならなかったことに気が付いたが、後の祭り。
恐る恐る、排出口を開けてみたら、豆は一粒もなかった。
全てサイクロンの方へ飛んでいってしまったようだ。

正直、生きた心地はしなかった。

ファンの取り替えとついでに1で記載したような設定温度でバーナーの火がついたり消えたり出来るように改造した。
これで、50万ぐらい掛かったように記憶している。

唯一救いはダクト内の煤が、すべて燃え尽き煙突掃除の手間が省けたことぐらい。

この後も、サイクロンに溜まったシルバースキンが燃え出すことは何回かあるが、あの経験があるからか、そう慌てることもなくなった。
他にも、焙煎中、落雷による停電も経験した。
この時は、投入直後で助かった。

これを読んでいる方々、万が一の場合は、この話思い出してください。

追記
ダクト掃除で集めた煤を片手を上げてパラパラと下へ落としもう一方の手は下(地面側)で落ちてくる煤めがけてライターで火をつけるとどうなるか?

粉塵爆発

これを余興で人に見せるとみんな腰を抜かす。



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11:41 | 焙煎 | comments (2) | trackbacks (0) | page top↑

焙煎履歴 1

これまでに1kのサンプルロースターから始まって、100k、400kの全自動熱風焙煎機、続いて独立後30kの半熱風、12kの直火。
今は8kと60kの半熱風焙煎機を使っている。

12kの直火は、ドラムの歪みと軸受けのベアリングが損傷していて激しい異音のする廃棄処分の炭焼き焙煎機を譲り受けた。

既に廃盤となった機種で部品交換もままならない代物でドラム下の炭を入れる容器を取り外して
俗に言う「遠火の強火」を意識してガスバーナー位置を少し離して取り付けて直火に改良した。
バーナーも鉄管にドリルで穴を空けただけの自家製でかなり、危なっかしい代物。

直ぐ壊れたしまったが、半熱風と直火それぞれの豆をミックスしたブレンドコーヒーは、重くてキレがあると評判良かった。

30Kは、排気口と豆が当たる部分に当時としては珍しかったデジタル温度計を付けて徹底的にデータ取りに励んだ。

更にとある理由で1回目の爆ぜ以降の焙煎速度を緩やかに保てるよう設定温度でバーナーの火がついたり消えたり出来るように改造した。
それと、オーバーローストを防ぐ意味で、釜内に水が注入出来るようにもした。

他にも、排気ダクトの長さや角度を変えたり、とにかく思いついたことは、何でも取り入れた。

結果はどちらかというとやらない方が良かったと言うような感じだったが、
わずかな改良で味覚がこうも変わる物なのかと、驚きの毎日だった。

そして、大失態をやらかしたのもこの30K焙煎機だった。
この話はまた後日。

17:20 | 焙煎 | comments (2) | trackbacks (0) | page top↑

ハンドピック考

忙しい。とにかく忙しい。
業務用でkgあたり300円平均の値上げ。
豆自体は一昨年の暮れあたりから高止まりで無理に買いだめされても
内心穏やかでない。
この際、売れるときにとは思うが…。

さて本題。

1個で約50gのコーヒーに悪影響を与えると言われている発酵豆と塩素臭を出す豆、この二つは完璧に拾え出せない。

発酵豆、或いは半発酵豆なんかは、文献の写真とかで黒豆あるいは部分的に変色した豆として出ているが、目視の範囲でそれら全てを取り除いても出るものは出る。それだけ強烈な異臭だと言える。

また、塩素臭の出る豆、これもどれだか分からない。
しいて言えば、高級品の代名詞ともいえる高地産のウォッシュドに多い。
抽出液の温度が高い時は気付きにくいが冷めるに従って、塩素特有の水っぽさが強く出てくる。

恐らく精選行程で何かしら発生するものと思われる。
収穫後はタイムスケジュールに沿って果肉除去→パーチメントに付着した粘着質の発酵→水洗いへと、これに要するタイムリミットがおおよそ
36~48時間。
それを越えてしまうと豆にダメージが残る場合がある。

高地の場合、急斜面での栽培が多く恐らく搬出や精選加工場への運搬に手間取り高温多湿化では、その様な問題が生ずることが想像できる。

この辺りのダメージについて現地滞在中に自分なりに調べてはいたが、
残念ながら原因究明には至らなかった。

実務優先だと中々、そう言う調査は思っていても進まない物だ。

そんな事例で、以下の事も根拠のない話で聞き流して頂きたい。

非水洗式のエチオピア(モカ)は酸味の強い豆に混入させると鋭角的な酸味をやわらげてくれ、ブレンドの隠し味として重宝している。
これを未完塾豆の混入が殆どない水洗式のモカを使うとあまりその効果が期待できない。

似たような事で、
未完塾豆が混ざっていると焙煎後の酸化速度が遅いように感じている。
表現としては「遅い」でなく酸化の味をごまかす。或いは和らげると言う方が適正かも知れない。





13:25 | コーヒー | comments (3) | trackbacks (0) | page top↑