fc2ブログ

Like a~1

今年、48になる。
20才でブラジルに渡り、クラシフィカドール(コーヒー鑑定士)を目指していた話は、はじめに書いたが、40を過ぎた当たりから目、鼻、舌とだんだん感覚が怪しくなってきた。
頭の中に、味覚の記憶はあるが、どうもセンサーの関知が悪い。
ひょっとしたら、独立して何もかも自分でやり出した30才ぐらいからこんな状態だったのかも知れない。

大きな味覚上の欠点や、柑橘系チョコレート系フレーバーについてはまだまだ採れるつもりだが、高級なマンデリンにあるミルクのような香りや花のような香、これが採れない。

頭の中にはそれらの香りの記憶が鮮明にあるが…。

20代の頃、食事は薄味、香辛料の類も一切口にせず、早寝早起きは当たり前。風邪で鼻が詰まろうものなら大目玉。

そんな仙人のような生活で毎日の買い付け審査に臨み、それぞれの味覚についてディスカッションにおいて、例え1ロット1000袋、500袋もの大型契約であっても年配の上司よりも自分のような若者の意見がかなり通った。

出入りの商社担当者から数千万円の商いだからチヤホヤされて一時は有頂天になったものだが、この年になって初めて何故、自分の意見が通るか、理由がわかってきた。

個人差はあるだろうが…

これはやっぱり悲しいな。

前置きはこれぐらいにして、修業時代は商社から持ち込まれるタイプサンプルの審査は「発酵臭」「リオ」「リオイ」と言ったブラジルの欠点方式のカップテストが主流で今のような味覚の得点方式とは違った。

味覚審査のレポートは、社内的には日本語で記載していたが、輸出業者向けにはどんなコーヒーがほしいか理解して頂きたく英文に書き直して送付していた。

ある時、産地のシッパーが来社して、ヨーロッパの某老舗ロースターの味覚審査表を見せて頂いた。

我々の欠点方式のレポートじゃなくLIKE A~で始まる味覚表現が100近くあり、例えば「グレープフルーツのような」「カシスのような」と言った調子で中には「粘土混じりの土埃」「「○○社のブラックチョコ」とか、さっぱり意味不明のものまであった。

今、主流の得点方式の味覚審査の原型は、少なくとも20数年前にはヨーロッパに存在していた。

これ以降、「Like a~」と言った一つ一つの味覚を仲間内で意識して学び出した。
今思うと、この仲間内の意見交換というのが、微細な香を知る上で非常に役に立った。

独立して意見交換の場が亡くなったのは、今の自分にとっては大きな痛手となったようだ。

だが、実務上のレポートは相変わらず欠点方式だった。

その辺りの話はまた次回とさせて頂くが、今月は値上げ交渉とそれに伴う買いだめ受注に追われて大忙し、次回が何時に成るやら。

スポンサーサイト



19:25 | コーヒー | comments (2) | trackbacks (0) | page top↑
焙煎屋の小道具 | top | チャフコーヒー

コメント

#
味覚と言う物は、鍛えて、ことばで表現し、共有する物なのですね。
それが数千万の取引に直結するとなると、、、、プロの世界の厳しさを思わずにいられません。
(素人の趣味は、うまい/マズい、ちょっと違う。にがい。すっぱい。そんな、ひどく身勝手でいい加減な言葉でやってます。ボクだけかもしれませんが、、趣味とはいえ評価が進歩しなければ、コーヒーも進歩しないのかもしれない。そうおもいました。)
得点方式ともなればさらに難しそうです。
「ライク ア~」が、100もあるとは!!
by: とんきち | 2006/02/06 22:02 | URL [編集] | page top↑
#
>プロの世界
これはどんな業種でも同じだろ。

今思うとカッパーは、単に味の記憶人だけで、実践に於いては余り役にも立たない。
審査結果をどう生かすかの方が、重要だと思う。
これが、ブレンダーと言う存在。

>ひどく身勝手でいい加減

それで良いんじゃないかな。個人個人の好みが違うから、
焙煎屋がいくらうんちくを並べたところで、「好みじゃない」と言われたらそれまで。
10人で1人美味しいと言ってくれたらそれで満足だな。
だから、俺は絶対に味を押しつけないように心がけて、
こちらから、相手の抽出スタイルとか好みを聞き出して焙煎から合わせるようにしている。
by: UGQ | 2006/02/07 17:06 | URL [編集] | page top↑

コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://roaster.blog38.fc2.com/tb.php/16-4e62bfbb